メーカー徹底討論 アラウーノ編1. 業界唯一!樹脂製トイレ「アラウーノ」

メーカーと徹底討論!パナソニック「アラウーノ」編 1.業界唯一!樹脂製トイレ「アラウーノ」

~トイレといえばTOTOかLIXIL~
この常識を覆すべく、2強に斬りこんだのが、総合電機メーカー パナソニック。「陶器ではなく、特殊樹脂を使ったトイレ」「モーターで動かす、可動式のトラップ」「台所用洗剤の泡で、便器を自動洗浄」。従来の便器メーカーでは考えもつかない、型破りな発想と技術力で開発したタンクレストイレ『アラウーノ』が消費者に支持され、発売開始からたったの9年で、累計販売100万台を達成。今、最も勢いのある、パナソニック アラウーノ。メーカー開発者との対談を通じて、その魅力に迫ります。

対談:2016年1月 ※ご紹介している商品やオプション品は対談当時のものです

1. 業界唯一!樹脂製トイレ「アラウーノ」

メーカーと徹底討論!パナソニック「アラウーノ」編 1.対談者
阿部

本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。パナソニックさんとは、トイレや洗面台、ビルトイン食洗機やIHクッキングヒーターなど幅広く、研修や意見交換会をさせていただいています。ただ、対談形式ははじめてで、ちょっと緊張しています。今日はよろしくお願いいたします。

中出さん

こちらこそよろしくお願いいたします。私は、主にアラウーノの販売促進・マーケティングを、坂本は、実際にアラウーノの開発に携わっていました。アラウーノの対談ははじめてで、同じく緊張しています。

阿部

パナソニックさんは、元々は陶器のトイレをつくられていて。その後、樹脂素材(有機ガラス系新素材)のトイレを開発されて、陶器は今はつくっていないですよね。陶器から、樹脂系の素材に移行したときの経緯や、苦労話などを教えていただきたいのですが。

中出さん

実はトイレは1960年からつくっていて、歴史は長いんです。そのときは陶器でつくっていたのですが、当社は樹脂成形の技術を得意としていたので、その技術を活用しようと。

ただ、樹脂成形でトイレをつくるのは、非常に難しいんです。例えば、樹脂は日に当たると黄色になったり、キズがつきやすいので、トイレの使い方とは合わない。樹脂のトイレを作りたいという思いはあったものの、最初は陶器でトイレをつくりました。

坂本さん

簡易水洗便器という、300ccの少ない水で流せますよという昔のトイレがありまして、そのときに樹脂のトイレをつくれないかとチャレンジしたんです。ただ、当時は普通の樹脂を使ったので、やはり黄色とか、劣化とか・・・。

中出さん

最初に陶器のトイレをつくってから、40年がかりで、ようやく念願の、樹脂成形・タンクレストイレのアラウーノを開発することができました。

阿部

そんなに歴史が長いんですね。

高橋

他社のタンクレストイレと比べて、アラウーノは価格が安いので、樹脂成形のトイレは、一度つくってしまえば、陶器よりも安いコストで製造できると思っているのですが。

坂本さん

実は・・・。 素材としては、樹脂の方がコストが高いんですよ。

高橋・阿部

えっ?

パナソニック アラウーノ対談
坂本さん

陶器は、もともとは土などで作りますから、素材としては陶器の方がコストは安いんです。それでもアラウーノの価格を安くしている理由は、トイレ業界で、パナソニックのブランドは2番・3番、後発メーカーでシェアも少なかった、という中で、なんとか他社さんに追いつこうと。その中でも、価格は重要な要素となりますので、できるだけ努力して、商品を市場に投入している、ということでして。

阿部

素材としては、樹脂よりも陶器の方が高い、というイメージがあったので、意外です。

高橋

本当ですね。びっくりしました。

阿部

ただ、言われてみると、確かに土と考えたら、陶器の方が安いというのも納得できます。

高橋

アラウーノの開発には3年かけたと聞いておりますが、どのあたりに時間をとられたり、大変だったのでしょうか。やはり素材の開発でしょうか。

坂本さん

陶器のトイレから樹脂製のトイレに変えることのお客様の不安感をどう解消するか、ということかと。技術的・性能的な評価項目はもちろんですが、不安感の解消という観点をどのように評価項目に加えて、その基準を達成するか、という所が大変でした。

一度市場に出ると、10年20年お使いいただく商品ですから、素材の耐久性やキズの付きにくさ、汚れの落ち方など、何回も何回もトライ&エラーを繰り返して、最終的に製品化することができました。

阿部

性能試験の中では、ブラシ掃除で何回もこすって、キズついてしまった、というようなこともあったのでしょうか。

坂本さん

はじめの試験では、キズがつくということもありました。試験を繰り返し、改良を重ねることで、トイレ用ブラシではキズがつかない素材を開発できました。と、一言で申し上げると簡単なのですが、本当に何度も苦労を重ねて、やっと実現できた素材なんです。

阿部

トイレは陶器が当たり前という時代に、樹脂という新しい素材を使ったトイレが認められるのか?という不安はなかったのでしょうか。初代アラウーノを発売した2006年当時、期待と不安のどちらが大きかったのでしょうか。

坂本さん

私は当時、評価・試験する立場でしたので、開発当初はどちらかといえば反対派の方で・・・。やはり立場上、安全・品質を重視しますので。ただ、樹脂といいましても、色々な素材がありまして、航空機や水族館の窓に採用されるような、耐久性があり、キズがつきにくい樹脂もあるのだから、広い視野でいい素材を選んでいこうと。あとは、決断です。

高橋

前例がない、基準がない中での、決断は難しいですよね。

中出さん

当時の企画担当にも話を聞いたのですが、やはり開発当初は不安はあったとのことで、使っていただくユーザー様に、「トイレは陶器でなければいけないのか?」というアンケートをとらせていただいた所、「お掃除が楽なトイレ」というご要望は多かったものの、「便器の素材が陶器でなければならない」というご意見はなく、やはり樹脂製でもいけるのではないかと。

パナソニック アラウーノ対談 東京ショールームの新型アラウーノを前に
阿部

確かに、ユーザーの立場からすれば、トイレの素材ってあまり意識しないですよね。言われてはじめて、「トイレは陶器なんだ」と。ある種の刷り込みみたいなものもあるかもしれませんね。

中出さん

陶器の時代が長かったので、トイレは陶器という感覚が当たり前になっていたのだと思います。「陶器でなければ本当にダメなのか?」という素朴な疑問から開発が始まったと聞いています。

阿部

陶器の時代は、樹脂のトイレを開発するための足がかりみたいなものだったのでしょうか。

坂本さん

当初、簡易水洗という樹脂の便器を作っていて、そこから1987年に水洗式便器の市場に参入しました。その当時、他のメーカーを見ますと、「便器は陶器」というのが当たり前で。簡易水洗では樹脂製トイレを作ったのですが、水洗式便器の市場では、まずは陶器の便器を投入しようという流れとなりました。ただ当時から、いずれは樹脂製トイレをつくろうという思いを持っていたことは確かです。

徹底討論 2.「樹脂製トイレの長所と短所」はこちら

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