油はねによる火傷(やけど)は、揚げ物や炒め物など、調理中に起きやすい事故のひとつです。もし油はねでやけどしてしまったら、慌てずに適切な対処法で応急処置を行いましょう。

この記事では、油はねでやけどした場合の対処法や深度について解説いたします。やけどは深度によって適切な対処法が異なるため、応急処置が済んだらやけどの深度についてもチェックしてみてください。

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油はね熱傷(やけど)の応急処置方法

「油はね」は、揚げ物をした時などに、水分が油により急激に温められ、水蒸気爆発を起こすことで起こる現象です。
軽度の油はねなら、軽いやけどで済むこともありますが、ドーナツなどの揚げ物が爆発すると、思いのほか広範囲にやけどが広がってしまうことも。

油はねで腕や顔をやけどしてしまったら、すぐに火を消し、応急処置を行いましょう。
すぐにできる3つの応急処置方法を解説いたします。

すぐに流水で冷やす

やけどした箇所を、すぐに流水で冷やしましょう。15〜30分程度、冷やし続けることが重要です。

患部に直接水がかからないよう、火傷した場所の近くに水を当て、患部の上を冷たい水が流れるよう調整してください。顔周りなど流水をかけにくい場所の場合は、氷水を入れたビニールを患部に当てて冷やします。

とにかく冷やして患部の熱を取ることが重要ですが、氷や保冷剤を直接当てるのはNGです。やけどだけでなく、凍傷のリスクがあるうえ、患部の皮膚が破れる危険性もあります。

もし、保冷剤を使う場合は、清潔なガーゼなどで包んでから患部に当てるようにしてください。

また、やけどした指に指輪などのアクセサリーをつけている場合は、指が腫れると外せなくなるので、早いうちに外しておくと安心です。

軽度の場合、ワセリンで保護

やけどした箇所を目視し、水疱(みずぶくれ)ができていなければ、病院に行かなくても問題ありません。日焼けと同じで、皮膚の表皮が炎症を起こしている状態ですので、ワセリンで保護してあげましょう。

ワセリンで保護することで、外部からの刺激や乾燥によるひび割れを防止します。感染症が心配な方は、オロナイン軟膏などの抗生物質入り軟膏を使用すると安心です。

みずぶくれは潰さない

患部に白っぽい水疱ができてしまったら、なるべくつぶさないように気をつけて、病院を受診します。水ぶくれをつぶすと細菌感染し、化膿してしまう可能性があるのでご注意ください。

やけどの跡が気になる場合は

やけどの傷跡を残さないためには、保湿と紫外線対策が重要です。治りかけの傷が乾燥してしまったり、紫外線で日焼けしてしまうと、色素沈着やひきつれが起きやすくなります。

傷が治ってきたら、紫外線対策ができる絆創膏に貼り替えると、外に出た時のうっかり日焼けを防げます。

万が一、傷跡が残ってしまったら、傷跡を目立たないよう修復する医薬品を使うのがオススメです。

「やけどの深度」とは

皮膚のどこまでやけどが到達しているのかによって、重症度が変わってきます。一番軽症なものをI度熱傷、重篤なものをIII度熱傷といいます。

  • I度熱傷:赤くなってヒリヒリする、触ると痛い
  • 浅達性Ⅱ度熱傷:水ぶくれができる。水ぶくれの中は赤っぽく、触ると痛い
  • 深達性Ⅱ度熱傷:水ぶくれができる。水ぶくれの中は白っぽく、痛みはあまりない
  • Ⅲ度熱傷:皮膚が黒色または白色に変色する。痛みを感じない

I度熱傷・浅達性Ⅱ度熱傷は病院に行かなくても治りますが、浅達性Ⅱ度熱傷以降は病院に行かなくてはいけません。

それぞれの特徴について詳しく解説します。

I度熱傷

I度熱傷は、やけどにより皮膚の表皮が炎症を起こしています。素早く冷やすことで、症状を抑えることが期待できますが、数日間は赤みやヒリつきが残ることもあります。日焼け程度の炎症と考えるとわかりやすいかもしれませんね。

真皮と言われる皮膚の奥の組織まではやけどが進んでいないため、比較的早く傷が治ります。傷が消えれば、やけどの痕も残りません。

ごく稀に、時間が経ってから水ぶくれができることがあります。水ぶくれができてしまったら、皮膚科を受診しましょう。

浅達性Ⅱ度熱傷

浅達性Ⅱ度熱傷は、表皮の下の組織「真皮」まで炎症がおよんでいるやけどです。水疱ができるのが特徴で、患部の周りが赤くなったり、むくみも見られます。みずぶくれの中は赤っぽいものの、患部の周りを圧迫すると白くなり、圧迫をやめると徐々に赤みがもどってきます。

水ぶくれをやぶらなければ、1〜2週間で治癒し、痕も目立ちません。水ぶくれを破らないように、普通の絆創膏などで保護して過ごしましょう。

深達性Ⅱ度熱傷

深達性Ⅱ度熱傷は、真皮の奥までやけどによる炎症が進んでしまっている状態です。汗腺や毛穴なども損傷してしまいます。3〜4週間で治癒しますが、治癒後もやけど痕が残ってしまう可能性が高いです。

小さな範囲のやけどでも、病院に行くことで傷の回復を早めることができたり、傷跡を残りにくくすることができます。深達性Ⅱ度熱傷になると、皮膚科ではなく、形成外科を受診する方が良いと言われています。

III度熱傷

III度熱傷は、皮膚全体が焼けてしまい、筋肉や神経まで炎症が起きている状態です。油はねでは、ここまで重症になることは考えにくいですが、揚げ物が爆発してしまった場合や加熱中の油に触れてしまった場合などは、重症化する可能性もあります。

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油はねによるやけどを防ぐ方法とは?

油はねでやけどしないためには、食材の下処理や揚げ物をするときの鍋の形状などに気を付ける必要があります。

油はねによるやけどを防ぐためできる3つの対策をご紹介します。

食材の水気を取る

揚げ物や炒め物をする時には、食材の水気をしっかり取っておきましょう。水気があると、水蒸気爆発が起き、油はねしやすくなります。

特に、ピーマンや茄子など、水気が残りやすい野菜は、キッチンペーパーで軽く拭き取ってから、静かに鍋の中に入れるようにしてください。

もちろん、調理器具の水気も厳禁です。

下処理を手抜きしない

甲殻類は下処理が面倒な食材として知られていますが、自分一人で食べるなら…と下処理を省いていませんか?下処理は味のためだけではなく、油はねなどの事故を防ぐためにも必要な手順です。

たとえば、イカやえびは水分を多く含む食材です。薄皮やしっぽを取らないと、あげている最中に爆発する可能性があります。野菜の中では、ししとうやオクラ、トマトなどが危険です。鍋に入れる前に包丁で切り込みを入れたり、半分に切ってから揚げると安心です。

揚げ物用鍋を使う

フライパンで揚げ物をすると、油の量も減らせるうえ、片付けが楽…と思いがちですが、フライパンは揚げ物専用の鍋ではないので、油はねしやすい形状になっています。深めの揚げ物用鍋を使った方が、油はねを防ぐことができます。

また、揚げ物中に油がはねるのを防ぐために蓋をするのは非常に危険です。どうしても油はねを避けたい場合は、専用のガードネットを使うことをオススメします。

まとめ

油はねによるやけどの応急処置方法と油はね対策について解説いたしました。
油は温度が高いので、やけどすると重症化することもあります。気をつけて調理してくださいね。