片さん宅 事の始まり編

「ステキ暮らし」第2回目にご紹介するお宅は、料理研究家・片幸子さんの自宅兼キッチンスタジオ。もともと生活の場だった自宅マンションを、スタジオとして利用できるようにリフォーム。料理を仕事にする片さんのこだわりは、真似したいことばかりです。細部にまできらりとセンスが光っていました。

1cm単位のこだわり!ゼロからつくり上げたキッチンスタジオ

片幸子さんは大学在学中に料理の道を志し、フードコーディネーターのアシスタントや専門学校での料理や栄養についての学びを経て、料理研究家として2005年に「+sachi(プラスサチ)」を立ち上げ、現在は、メーカーと共同でのメニュー開発を始め、料理教室やイベントなど、さまざまな側面から「食」をクリエイトしています。

片さんのスタジオに到着すると、コーヒーの良い香りが漂っていました。取材前に美味しいコーヒーを淹れていただき、しばしのリラックスタイム…。

今回お邪魔したスタジオは2020年12月にオープンしました。

稼働してからまだ1年も経たないスタジオ内には、片さんの商売道具である食器や調理器具、使い込まれた家具、そしてこの部屋の内装に合わせて新しく選んだインテリアなどが心地よく同居しています。

「それまでは違う場所で1LDKのマンションをスタジオとして利用していました。7年ほど慣れ親しんだ場所でしたが、来ていただく方にとって、リラックスできる空間ではないのかも…とずっと気になっていた」と言います。

「以前のスタジオは、一人暮らしだったら余裕があるかな?程度の広さのマンション。キッチンが囲われている造りだったので、デモンストレーションのときはコンロをリビングのスペースに設置するなどして、工夫が必要でした」と片さんは振り返ります。

そんなとき、片さんご夫婦が住んでいた分譲マンションの別の部屋に空きが出て、賃貸として入居者を募集していることを知ったのです。「今の部屋をキッチンスタジオにリフォームして、上の賃貸で暮らせたら…」と、ふと浮かんだアイディアを片さんはなんと、実現させてしまいました!

そうして、3LDKのマンションをキッチンスタジオにリフォームするというプロジェクトがスタート。

ゼロからイメージを膨らませ、オープンするまでにかかった期間はおよそ1年。その間、新型コロナウイルスの感染拡大などで、準備や工事が中断しつつも、逆に理想の空間について考える時間が増えて良いかも、とプラスに捉えていたと言います。

手描きの設計図(トップ写真の画像も)は、片さん自身によるもの。仕事柄たくさんのキッチンスタジオで仕事をした経験がある片さんは、本当に使い勝手の良いスタジオは決して多くないといいます。撮影映えするオシャレさだけではダメなのだと話してくれました。

今回、片さんのイメージを実際に形にしたのが、友人でもある設計士の南部健太郎さん。もともと片さんの趣味嗜好を知っていた南部さんと二人三脚で1cm単位にまでこだわって、理想のスタジオへと完成させました。

テーマは「来てくれた方が居心地良く過ごせるスペースにすること」。まずは自分が気持ちよく過ごせる空間にと考え、最優先したのが「動線」です。

アイランドキッチンを中心に、左で片さんやアシスタントの方が料理や作業をして、右側ではその様子をお客さまが見つめている…そんな場面をぜひ、想像してみてください。

片さんとアシスタントの方がすれ違ったり、お客さまの後ろを誰かが通ったりするということもあるはず。そんなときに体が当たったり、作業が中断したりしない広さと導線がしっかり確保されています。

設計士の南部さんと何度もデモンストレーションや話し合いを重ね、採用する住設などは全て気になったメーカーのショールームやお店に見に行くほどのこだわりよう。蛇口ひとつ探すのに、丸一日かけたこともあったそうです。

さて、どんなキッチンスタジオが出来上がったのでしょうか……?

#2キッチン編では、そんなキッチンの詳細をお届けします!